ニュージーランド移住前に少し考えるべき社会保険のこと。-国民年金編-

国民年金

前の記事:ニュージーランド移住前に少し考えるべき社会保険のこと。-健康保険編-

前回からの続き。今回は、海外移住時の国民年金について。

日本の国民年金は20~60歳の40年間保険料を支払うと、65歳から満額もらえる。平成27年度の満額は年間78万1千円である。ひと月約6万5千円。

年金を受給する資格を得るには、25年間の保険料支払いが必要である。

自分たちが65歳になったとき、今の年金システムが存在するのか否か、存在したとしてもいくらもらえるのかという議論は他に任せるとして、少なくとも25年払わないことには年金をもらう資格は得られない。真面目に保険料を払い続けても24年間だと1円も年金をもらうことができない。

(2017年4月からは、この年金受給資格期間が10年となる予定だ。ただし、消費税10%導入と抱き合わせの施策のようなので、現時点ではあくまで予定である。ここでは「25年」で書き進めよう)

健康保険同様、日本で居住する限り年金の保険料を納める義務はあるのだが、では、海外に移り住む場合はどうなるのだろう。


海外居住者の国民年金

海外居住者は、海外渡航前に住民票を抜けば、国民年金の保険料の支払いは任意になる。
払ってもよいし、払わなくてもいい。

海外に居住することとなったとき 日本年金機構

支払いの義務がなくなるのは、それぞれの滞在国でその国の社会保険料を納める義務が発生するからであろう。(ちなみにニュージーランドでは、年金制度はあるが月々の年金保険料の支払いはない。)

海外渡航後も年金の保険料を継続して払えば、当然将来貰える年金額は増える。

では、月々の保険料を払わないことを選択した場合どうなるだろうか?
上で述べた、25年間という受給資格期間を満たせなくなる心配がでてくる。

もちろん保険料を納めないのだから、将来もらえる年金額は少なくなる。しかし、海外居住者が年金保険料を納めないのは「滞納」にはならないので、25年という年金受給資格期間は消化していく。これを「カラ期間」と呼ぶ。

極端に言えば、25年間保険料を払わずに海外ですごしても、年金を受け取る資格だけは得ることができる。

海外滞在中に日本の国民年金の保険料を払うか払わないかは、個人の人生設計によるので、一概にどっちがいいとは言えない。将来日本に戻って生活する予定の人は、払っておくのが得策だし、海外に骨を埋めるつもりの人は、もらえるかどうかもわからない日本の年金の保険料を支払う必要はないだろう。

ただ、住民票を抜かずに渡航して保険料を払わない、というのだけは避けよう。25年という年金受給資格期間も消化しないので、何もメリットがない。


最後に1つだけ大事だと思うこと

ここまで「住民票を抜く/抜かない」と、いかにも意図的に操作できる行為であるかのように書いてきたが、基本的には実態に基づいて、海外移住の場合は住民票を抜くのが正解だろう。

しかし実際は意図的に選択できる。

住民票を抜かずに日本在住のままでもやりすごせてしまうし、もしくは、意図的ではなく何も知らずに手続きせずに渡航してしまう人もいる。

住民票が日本にあれば、先に述べたように社会保険料の支払い義務が発生するが、その反面、恩恵も受けることができる。海外居住であれば日本の所得がない可能性が高いので、低所得者の給付金の対象となったり、国民年金の全額免除申請もできてしまう。(全額免除は、カラ期間で過ごすより断然得策である)

その結果、
「海外居住者に給付金を支給するのか!?」
「海外で所得のある人間に年金の全額免除を許可するのか!?」
という批判が起こったりもする。

ここでは、どちらがメリット/デメリットになるか、どちらをお勧めするかという議論をするつもりはない。

仕組み上可能であるなら、個人的にはどちらでもいいと思うし、それぞれの意思に従えばいいと思うのだが、大事なことは、こういうことも自分できちんと調べて知っておくこと、だと言っておきたい。

日本を出るということは、ある意味日本を知ることである。これは、海外移住後も様々な場面で実感することとなる。

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