社会の授業で習ったように、1893年世界で初めて女性の参政権を認めたのがニュージーランド。今もなお、女性が活躍する国として毎年ランキングの上位に配置され続けている。では実際、なにがどう評価されて女性が働きやすい国と認知されているのだろう。
日本とニュージーランドの現状
まず日本の状況であるが、安倍政権が「女性が活躍できる社会」を改めて目標に掲げることからして、過去から現時点まで「そうではない」ことが明白である。誰しも、女性が活躍していると実感していないだろう。改めてここで詳しく書く必要もない。
一方、ニュージーランド。毎年「女性が働きやすい国ランキング」で上位(2013年は1位)に選出されることからも、世界的にみても、女性が活躍できる社会であることは間違いなさそうである。
Where is best to be a working woman in the rich world|英紙 The Economist
では具体的に、日本と比べて何が違うのだろう。ニュージーランドが「女性が働きやすい国」と評価される所以はどこにあるのだろうか。
日本もニュージーランドも働く場所は同等にある
まず、女性が働く場(雇用機会)という目で見てみる。以下の表は主要国の就業者に占める女性の割合である。
引用:データブック国際労働比較2015
世界各国における働く女性の割合は、約45%前後が一般的といったところである。この数値においては、日本(42.8%)がやや低いもののニュージーランド(46.9%)他各国と比べても、それほど差はない。ニュージーランドも特に目立っているわけではない。
日本も女性が働く場所がないわけではないことがわかる。
では、なぜ日本は女性が活躍できる社会というイメージがないのだろうか。
実際、女性が「活躍」できているかどうかが重要
「活躍する」とは、評価されて初めて実感できることである。単なる末端の使い捨ての労働力では活躍とはいえない。責任を与えられ、力を注ぎ、相応の対価を得ることが「活躍」である。
ではまず、各国の管理職に占める女性の割合をみてみよう。責務の重いポジションに女性を活用しているかどうかがわかる。
引用:データブック国際労働比較2015
フィリピンとアメリカが突出しているものの、ほとんどの先進諸国では30~35%が平均的な割合である。ニュージーランドもその中に含まれる。
それに比べ、日本や韓国の数値は低い。日本はたったの11.2%である。組織において責任や権限あるポジションは女性に与えられていないことがよくわかる。
街中のコンビニやファミレスはもちろん、組織のサイズが大きくなるとともにその傾向は顕著になる。現場から離れ個室でふんぞり返っているのは常に男だ。結局のところ、女性を上に置くことに日本社会が慣れていないのである。
日本の悪口はここら辺で一旦終わりにして、ニュージーランドに話を戻す。女性が働きやすい国1位にも選ばれる理由がまだ見当たらない。ここまでは他の先進諸国に比べても、ごく平均的である。
ニュージーランドの良さは男女格差の小ささにある
他の先進国諸国と比べ、ニュージーランドが飛び抜けて優れている指標がある。それが、男女間の賃金格差である。性差による所得格差がほとんどないのである。下のグラフを見てもらいたい。
引用:データブック国際労働比較2015
棒グラフが短いほど男女間の賃金格差が小さいことを意味する。この賃金格差は以下の通り計算されている。
(男性の中位所得ー女性の中位所得)÷男性の中位所得×100(%)
これは、男性と女性を別々に所得の高低で並べその中間値を比較する計算である。簡単にいえば、男と女の稼ぐ力の差である。
韓国や日本に関しては改めて驚くことはないが、先の統計で女性の地位がある程度確立されていることが裏付けられた他の先進諸国においても、約20%近い賃金格差がある。(20%とは、例えば、男性の平均年収500万円の職業において、女性は平均年収400万円ということである。)
この指標において、ニュージーランドの数値は4.2%。ほとんど格差がない。掲載したグラフは2011年の統計を元にしているが、過去の十数年または、直近の同指標をみてもニュージーランドは同様の値をマークしている。男女とも等しく同程度の収入を得ているのである。
この最後のデータが全てを物語ってしまう。男女の所得が同じであるということは、男性女性関係なく、雇用機会から職務内容、賃金まで全てが平等であることを意味する。
これが、ニュージーランドが女性にとって働きやすい国たる所以であろう。「女性が活躍できる国」は、本当である。